2023/06/20 05:14
こんにちは。
パン工房クルール(Bakery Colorer)の店主です。
今日は、パン生地のpHの重要性について書いてみようと思います。
まず、「pH」とは何だろう?と思った方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明いたします。
「pH」とは「水素イオンの濃度の略称」です。「ペーハー」だとか「ピーエイチ」と呼ばれます。そして、ある対象物(溶液・食べ物・土壌などの"水分")のpH(水素イオン濃度)を測定することで、対象物が「酸性」か「アルカリ性」かを知ることができます。つまりpHとは「ある物体に含まれる水分が【酸性なのか】【アルカリ性なのか】を図る尺度」としての役割があります。このpHの数値は、0〜14まであり、「0に近い側が酸性」、「14に近い側がアルカリ性」となります。身近なものに例えると、お酢はpH2、洗濯洗剤はpH11となります。
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酸性・アルカリ性のpH値
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ph0-2・・・酸性(塩酸・胃酸・お酢)
ph3-6・・・弱酸性(オレンジ・トマト・コーヒー・食器用洗剤)
ph7・・・中性(水)
ph8-11・・・弱アルカリ性(海水・重曹・石鹸・洗濯洗剤)
ph12-14・・・アルカリ性(アンモニア・漂白剤・水酸化ナトリウム)
さて、このph濃度がパンの何と関係があるのでしょうか? それは、「酵母の活動状況」と「パン生地の食感」になります。
下記の通りの影響があります。
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パン生地が、アルカリ性が強いとどうなるか?
酵母の活動が弱まってしまいます。するとパンの膨らみが少なくなり、膨らみのないパンになってしまいます。
パン生地が、酸性が強いとどうなるか?
酵母が活性化しやすくなります。しかし、活性化しすぎると炭酸ガスの発生量も増えてしまいグルテンが柔らかくなります。それがパン生地にベタつきを生み、膨らみのないパンになってしまいます。
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つまり、パン生地にとって最も最適なph濃度は、通常は「中性の7」となります。「通常」と書いたのは理由があります。
それは、作り手の考え方によって、理想のpH値は変わってくるからです。例えば、パン生地のpHを酸性に傾けることでわざと酵母を活性化させ、グルテンを柔らかくし、口溶けの良い生地に仕上げえることもあります。ただし、成形はしづらくなり、生地がだれている分上に伸びにくいパンとなります。
このように、パン生地はpH値をどの位置にもっていくかによって、「酵母の活動状況」が変わり、それが「パン生地の食感」へと影響します。
パンはやはり奥が深いですね。もう化学の領域ですね。
ちなみにpH濃度を測る機械は、楽天市場などのオンラインサイトでも販売されています。土壌用のものは数千円からあり安いのですが、食品要は数万円するものが相場のようです。
美味しいパンをつくるためには、奮発しても良いかもしれませんね。。
ここまで長い文章をお読みいただき、ありがとうございます。今後とも、当店とパンそのものの成長をお楽しみにしていただけると嬉しいです。